タイの自動車市場、5年ぶりに息を吹き返す

バンコク——タイの自動車市場は、2017年の今年ようやく息を吹き返しそうです。2011年9月から2012年末にかけて実施されたファーストカー減税(自動車の初回購入者に物品税を払い戻す税制優遇措置)の恩恵を受けた自動車購入者は、自動車を5年間保有し続けなければなりませんでした。その彼らが自家用車を売り払い、新車を買い替えられるときがやって来たのです。
 日本の大手自動車メーカーは今年1月、新車の売り出しを発表しました。久々の好景気の恩恵にあずかろうとするメーカー各社の思いの強さが表れています。
 タイ国トヨタ自動車の棚田京一社長は1月31日、昨年(2016年)は自動車業界にとっては最も厳しい年であったが、2017年のタイの新車市場は好転し、前年比4%増の80万台になるとの見通しを明らかにしました。日本のトップ自動車メーカーであるトヨタは、タイ自動車市場の30%以上のシェアを誇り、同社の見通しは、販売環境を見極める際の主要な指標と見られています。
 自動車メーカー各社は、我先にこの市場回復の波に乗ろうとしています。たとえば、ホンダは、主力コンパクトセダンの新型「シティ」(ホンダの東南アジア販売の4分の1を占める)の発売を発表しました。ホンダは今年、タイにおける同社の全車種販売台数を前年比12%増とする計画を明らかにしています。
 マツダはより積極的な目標を掲げ、前年比18%増と、2000年以降最大の市場シェア達成を目指しています。マツダは、新型ミッドサイズ「マツダ3」を含む6車種を発表しました。
 トヨタは、ホンダ「シティ」に対抗し、コンパクトセダン「ヴィオス」を発表しました。日産は、先進安全装備で話題のコンパクトカー「ノート」の投入を準備しています。

5年間の停滞にやっと終止符
 2011年9月に前政権によって実施されたファーストカー減税は、市場に長引く深刻な影響を及ぼしました。それは、需要の急拡大をもたらし、2012年のタイの新車販売台数は過去最高の143万台(2011年の約2倍)となりました。ファーストカー減税の利用者は、購入した自動車の5年間保有が義務づけられていました。そのときの購入者の多くが、2017年の今年ようやく縛りを解かれ、新車の購入が可能になるわけです。
 英語版バンコク・ポスト紙によると、タイ工業連盟(FTI)の自動車工業倶楽部で広報を担当するスラポン氏は、「政府のファーストカー減税で自動車を購入したおよそ2万人から3万人が、新車の買い替えを行うと見られることから、わが自動車工業倶楽部は市場心理を楽観的に捉えております」と語っています。またスラポン氏は、新車販売が好調な一因として、農産物価格の上昇を挙げています。
 市場回復とは言うものの、2017年の自動車販売台数は2012年の60%にも届きそうもありません。しかしファーストカー減税の後遺症が、今の自動車業界の昂奮をもたらしていることは確かでしょう。
 ファーストカー減税は、多くの消費者に自動車購入に踏み切らせました。ただし、その結果、自動車販売は2014年以降縮小しました。タイに工場を持つ自動車メーカーは、輸出の拡大によって事業の維持を図りましたが、一部の施設は閉鎖に追い込まれました。トヨタは昨年800人の希望退職を募集しました。ホンダはタイにある施設の一部を停止し、タイ工場の生産能力を3分の2まで縮小することを決定しました。
 タイ製造業の柱である自動車ビジネスの減速は、タイ経済全体にブレーキをかけています。2014年始め以降ほぼすべての四半期における資本財生産(実質的に自動車生産)の増加率(前年同期比)は、タイの四半期GDP成長率を下回りました。
 中長期的に見て、自動車市場はどうなっていくのでしょうか?
 マツダでASEAN事業を担当する井上寛(ひろし)氏は、緩やかな回復を予想しており、2020年までに販売台数を100万台まで回復させることができると見ています。
 トヨタの棚田氏は、ベースライン値を90万台と捉え、経済が好調なうちは100万台まで伸び、不調になれば80万台まで落ち込むと読んでいます。
 いずれにせよ、将来の見通しはV字回復からは程遠い状態です。市場の各プレーヤーは、大幅な成長が見込めないなかで、わずかなパイを必死に奪い合う熾烈な戦いを強いられることになるでしょう。

東南アジアの緩やかな成長
 2016年の東南アジア主要6カ国の新車販売台数の合計は、3年ぶりに前年比3%増の約320万台となりました。タイの成長は減速しましたが、域内最大市場であるインドネシアの急速な回復が全体の販売を下支えしたものと思われます。
 東南アジアの市場規模は、インドやイギリスのそれに匹敵します。日本の各メーカーはこの地域に強いプレゼンスを築いており、全体で市場シェアの約80%を占めています。そのため、東南アジア市場の浮き沈みは、各社の収益に直接響いてきます。
 自動車産業界はまだ公式のデータを発表していませんが、2016年のインドネシアの新車販売台数は前年比5%増の約106万台と見られます。低金利などの影響もあり、消費者心理に改善が見られます。
 2016年の新車販売台数は、フィリピンが約40万台、ベトナムが約30万台でした。両国の市場とも2桁成長を続けています。
 2017年にはマレーシア市場も回復が見込まれており、東南アジア市場の成長軌道の継続に寄与することでしょう。
 トヨタの棚田氏は、タイとインドネシアの巨大市場の絶大な影響を踏まえ、東南アジア地域の成長率は10%以下の緩やかなものになるとの見通しを示しています。インドネシアの自動車市場は110万台に届くものと見られます。
 米国の金利が上がっても、東南アジア諸国は同じ幅しか金利を下げられません。東南アジアにとって最大の貿易相手国・中国の経済は不確実性に覆われています。市場の規模とシェアにばかり目を奪われていると、かえって収益を損なうおそれがあります。そのため、自動車メーカーは、市場を注意深く見極めながら自社の戦略を立てていかなければなりません。

タイの自動車クラスター


タイの自動車産業は50年以上前に誕生しました。以来、東南アジア最大かつ世界有数の自動車ハブへと発展してきました。2016年現在、タイは世界第13位の自動車生産国となっています。国内市場の規模という点でも、自動車コンポーネントのサプライヤーが集まるクラスターが確立しているという点でも、タイには強みがあります。自動車産業は、タイのGDPの12%近くを占めており、OEMとサプライヤー(Tier 1、Tier 2およびTier 3)を含め、50万人以上を雇用しています。日本のOEMが市場の85%を、米国のOEMが15%をそれぞれ占めています。

2016年、タイ政府は従来のエンジン排気量に代えて、二酸化炭素(CO2)の排出量、(エタノールを85%混合した)ガソホールE85への対応、燃料効率に基づく新たな物品税を導入しました。最大の影響を受けた車種は、SUVとピックアップトラックでした。2016年以降、消費者は新物品税が課されることになったため、駆け込み需要が増え、2015年後半の自動車販売は増加しました。
 タイ政府はまた、一定期間の所得税免除、物品税還付、その他の税制優遇措置など、製造業者に対してエコカー生産を奨励しています。エコカーと同様、タイ政府は電気自動車(EV)も視野に入れています。2016年、タイ投資委員会(BoI)はEV生産奨励策として、電池式電気自動車(BEV)の輸入関税免除とBEV生産に対する優遇措置を決定しました。

タイの自動車クラスターは自動車企業などの集合体のことです。Tier1企業が700社、Tier2およびTier3企業が1,700社からなり、自動車産業全体の労働者の約80%を雇用しています。この労働者の多くはワーカーが占められており、こういったワーカーは工業団地の近隣の出身者になります。しかし、技術者などの雇用は工業団地から離れた地域などから働きにくることが多いです。
ワーカーと呼ばれる労働者は近隣の出身者が多いため、工場前の張り紙や友人・知人などの紹介でほとんどが集まります。技術者になると近隣の出身者から見つけることも出来ますが、多くは人材紹介会社などに依頼して集めることが多いです。

タイの自動車クラスターでの仕事を扱う人材紹介会社
https://kyujin.careerlink.asia/thailand(外部リンク:キャリアリンクタイランド)

タイ製の部品およびコンポーネントは、世界のOEMからその高い品質が評価されており、タイにおける組立部品全体の約85%を占めています。タイの自動車輸出の約75%は自動車部品、次いでエンジンや予備部品となっています。グローバルOEM部品サプライヤーの上位100社のうち50社以上が、タイに製造拠点を置いています。

2016年のタイの自動車生産と輸出は減少しましたが、国内販売は前年より増加しました。2017年の国内販売は前年比6.7%増となっています。ただし、石油価格の下落と世界経済の状況から、輸出は伸び悩みが予想されます。記録的な家計の負債や購買力の低下、貸付承認手続きの厳格化は、2017年の国内経済の回復に悪影響を与えることになるでしょう。
 タイ政府は2011年に、自動車の初回購入者に物品税を払い戻す優遇措置(いわゆるファーストカー減税)を実施しました。その影響で2012年の自動車販売は急増したものの、翌13年には減少しました。政府の優遇措置は、購入した自動車の売却を5年間禁じていました。当時ファーストカー減税を利用した自動車購入者は、今年になってようやく売却が可能になりました。すでに自家用車を所有している者の多くも、より効率的な新型モデル(2016年に実施されたCO2排出量ベースの物品税制に対応した自動車)の購入を検討しています。OEM各社は、ファーストカー減税の恩恵を受けた30万人の購入者が毎年新車を購入するものと見込んでいます。需要の増加を期待する多くの日本の自動車メーカーも、新車購入検討者を魅了するより効率的な新型モデルの発売を2017年に予定しています。
 CO2排出量ベースの新物品税制は、近い将来における環境配慮型自動車への移行を進める政府の取り組みの表れです。従来型のガソリン車よりも温室効果ガスの排出量が少ないエコカーの市場シェアは、2015年の35.7%から翌2016年には39.8%へと拡大しました。政府は、EVへの買い替え奨励策を講じ、EV普及のための充電ステーション等の支援基盤を整備する必要があります。
 タイは近い将来も東南アジアにおける製造業の中心であり続けるでしょう。しかし成長を持続させるためには、研究開発に投資する必要があります。EVやエコカー、ハイブリッドなどの新技術への重点的な取り組みを通じて、タイは今後15〜20年以内に内燃機関の段階的廃止に徐々に進みつつある輸出先市場のニーズに応えられるようになるでしょう。

日産と三菱自、東南アジアでの提携を強化へ

日産自動車と三菱自動車は、きわめて重要度の高い東南アジアの自動車産業において国内のライバル企業と戦うため、両社の過去7カ月間のアライアンス(提携)を強化する計画を進めています。
 両社の会長を兼ね、フランス・ルノー社の取締役会長兼CEOでもあるカルロス・ゴーン氏は、日産と三菱自が、すでに発表したよりも大幅なコスト削減を目指していることから、サプライヤー、サービス、技術の共有を促進する意向を明らかにしています。
 燃費データ改竄スキャンダルでライバルの三菱自が打撃を受けたのち、2016年に同社株式の34%を日産が取得しました。これで強化された日産・三菱アライアンスにとって、東南アジアは試金石の場となるでしょう。同アライアンスが主張するように、東南アジアにおける両社の業務は重なる部分が多く、その提携の強化は、トヨタなど競合他社から市場シェアを奪い取るのに役立つでしょう。
 米国の自動車市場がピークを過ぎ、日産グループがその伝統的牙城・中国で他の日本車メーカーとの競争にしのぎを削っているまさにそのとき、日産は東南アジアにおいて攻勢をかけています。
 2017年はアライアンス全3社(日産・三菱自・ルノー)にとって「非常に力強い」年になりつつありますが、東南アジアにおいて、日産と三菱自はその潜在力を「かなり下回って」いる市場シェアを拡大するため、互いに協力していく必要があるとゴーン氏は述べています。
 モルガン・スタンレーMUFG証券のデータによると、2016年のASEAN地域における日産の市場シェアは5%でした。三菱自の市場シェアはそれを上回る7%でしたが、同社の競争力と製品ラインナップは、研究開発費の削減後に縮小しています。
 ゴーン氏は、「両社が協力すれば、製品提供やローカリゼーション、その他多くの点で強化が図られるでしょう。それによって両社は、東南アジアにおいて今よりもはるかに優れ、はるかに競争力のある企業になるでしょう」と語っています。
 ゴーン氏はまた、仕入れや物流を共有すれば、技術や生産プラットフォームの共同管理も進むとも述べています。
 先のタイとインドネシアの訪問の締め括りに演説したゴーン氏は、「これらは、2018年、2019年、2020年に実現することになる」と語っています。


 日産と三菱自の会長を兼務するゴーン氏は、両社のアライアンスは設備利用を高め、「はるかに合理的な方法で」そのプラントを活用できるようになると述べています。
 日産は先ごろ、三菱自の幹部(小糸栄偉知氏)をインドネシアの事業責任者に就けました。日産・三菱アライアンスに専念するため4月に日産のCEOを退いたゴーン氏は、「われわれは同じパートナーを持ち、同じ技術を使うことになる」と述べ、「それ(=アライアンス)は、われわれが二度手間をかけずに済む唯一の方法です」と語っています。
 日産と三菱自は、両社のアライアンスによって、2017−18会計年度に計490億円(4億3,800万USドル)、2018−19会計年度には計1,000億円のグローバルコストが削減できると見積もっています。


 ゴーン氏は、政府が産業支援を表明してくれればすぐに、日産・三菱アライアンスは、東南アジアで電気自動車を推進する用意ができていると述べています。「東南アジアの自動車市場に電気ショックを与える“願望”ならぬ“意志”があるという最初の合図があれば、われわれはそこに立っているでしょう」とゴーン氏は語っています。
 モルガン・スタンレーMUFG証券のアナリスト磯崎仁(ひとし)氏は、東南アジアにおける三菱の強力なプレゼンスに加え、東南アジアと関係の深い商社など、巨大な三菱グループが持つ販売・流通網を活用することで、日産はアライアンスのうまみを享受することができると主張しています。
 磯崎氏は、2016年のグローバル自動車市場における日産のシェアが6%であったと述べ、「日産がASEAN市場を奪取しないかぎり、そのグローバルシェア目標の8%達成は難しい」と語っています。

パキスタンの自動車ベンダー、タイとのFTAを懸念


パキスタンの自動車ベンダー各社は、現在進行中のパキスタン‐タイ自由貿易協定(FTA)交渉に不快感を示しています。
 パキスタン商務省は、産業省工業開発局(EDB)にたいし、パキスタンの潜在的市場規模について検討したタイが自動車市場へのアクセスを要求していることを伝えました。
 タイは、パキスタンに対して提示する譲許表に、自動車と自動車部品を加えています。その他のFTAでは、譲許表のなかに自動車は含まれていません。
 EDBは、パキスタン‐タイFTAについて協議するための会合の開催(2016年11月10日、於イスラマバード)を自動車分野の利害関係者に呼びかけました。
 EDBは、利害関係者に宛てた書簡のなかで、パキスタン政府は、新規投資家や既存のOEMとベンダーへの優遇措置を定めた自動車政策2016〜2021(2016年7月1日発効)を導入していると述べています。そして、いかなるFTAであれ、自動車部門を優遇する最恵国待遇(MFN)税率を変更することは、自動車政策の精神に背くことになるというEDBの信念を伝えています。
 パキスタン商務省は、パキスタン‐タイFTA交渉の第5回会合は2016年11月16日から18日までタイで開催されるとEDBに伝えています。第5回会合では、パキスタン、タイ双方が相手国に提示するオファーリストと関税引き下げモダリティ(TRM)について協議、確定することになっています。
 大手自動車組立業者3社は、すでにタイから相当量の部品や付属品を輸入しています。この事実は銘記しておくべきでしょう。
 パキスタン自動車部品工業会(PAAPAM)の元会長アミール・アラワラ氏は、パキスタン政府にたいし、現在進行中のFTA交渉から自動車分野を除外すべきだと主張しています。
 アラワラ氏は、FTAの譲許税率が適用されると、新自動車政策において政府が公表している現行の関税率はそれに取って代わられるうえ、FTAによって関税率が引き下げられれば、国産部品の使用が手控えられ、将来のローカライゼーションに向けた投資計画が見送られ、さらには連邦政府の歳入に損失がもたらされるなど、数々の問題点を挙げています。
 アラワラ氏はまた、FTAによる自動車部品の輸入を許せば、自動車組立や部品製造への既存・新規プレーヤーの投資誘致を目指す政府の取り組みにも悪影響が生じると述べています。加えて、自動車部門は300万人以上の労働者、技術者、エンジニア、経営専門家に直接間接の仕事を提供しているとも述べています。

 一方、パキスタンオートバイ組立業者協会(APMA)のムハンマド・サビル・シェイク会長は、パキスタン‐タイFTAによって主に恩恵を受けるのは、パキスタンにある日本の組立業者であると述べています。
 シェイク会長によると、日本の組立業者は、パキスタン市場向けに30年前の型の自動車やバイクを製造しているといいます。しかも日本の組立業者は、タイ市場向けに、トヨタやホンダ、スズキの自動車や、ホンダ、ヤマハ、スズキの最新型バイクも製造しています。
 シェイク会長は、パキスタン市場は新型のバイクや自動車も必要としており、それはFTAその他の協定を通じて実現可能であるとも述べています。

交通安全の向上を目指す「ストップ・ザ・クラッシュ」キャンペーンがタイで開始

交通事故から命を守るための最新の衝突回避技術の普及を目指すグローバル連携の取り組み「ストップ・ザ・クラッシュ」キャンペーンが5月12日、タイのバンコクで始まりました。タイは、交通安全事情が世界でも最悪な国の一つです。
 バンコクでのイベントは、2016年11月にマレーシアのクアラルンプールで実施されたASEANのキャンペーン成功を受けたものです。マレーシアのイベントでは、横滑り防止装置(ESC)が2018年6月から同国で義務化されることが交通相から発表されました。

 タイ国内の交通死亡事故の約4分の3は自動二輪車または自動三輪車が原因となっていることから、バンコクにおけるキャンペーンは、オートバイの安全技術に重点を置いています。「ストップ・ザ・クラッシュ」で実演された二つの技術、オートバイ用アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)と死角検知(BSD)システムは、タイにおける交通死亡事故を減らし、多くの命を救ううえで非常に大きな効果を発揮するでしょう。
 「ストップ・ザ・クラッシュ」では、その他ESCや衝突被害軽減ブレーキ(AEB)などの技術も実演されました。このイベントは、タイ内務省、世界保健機関(WHO)、モンクット王工科大学ラートクラバン校(KMITL)およびタイ健康促進財団が後援しています。
 タイ版「ストップ・ザ・クラッシュ」は、ロンドンモーターショーやウルグアイのモンテビデオでのイベントに続く、国連世界交通安全週間「スロー・ダウン」への連携支援の一環として開催された第4回「ストップ・ザ・クラッシュ」イベントです。
 以下は、「ストップ・ザ・クラッシュ」に関する主要関係者の発言です。
◇「ストップ・ザ・クラッシュ」のデービッド・ウォード事務局長
「『ストップ・ザ・クラッシュ』はタイにおいて歓迎されています。この国は交通安全上の深刻な課題を抱えておりますが、オートバイ用ABS、ESC、BSDによってそれが改善される可能性があります。」
「『ストップ・ザ・クラッシュ』へのタイ政府の参加を嬉しく思います。私どもとしては、タイ政府に法律の制定を強くお願いしたい。それが、交通死亡事故を減らすためのいちばんの近道だからです。」

◇タイ内務省災害防止軽減局のコブチャイ次長
「われわれは、国連交通安全週間中の本日、タイにおいて『ストップ・ザ・クラッシュ』を開催できることを非常に喜ばしく思います。タイの車は、重い二輪車からなり、オートバイ用ABSや死角検知(BSD)などの実証済み技術は、衝突防止に役立つでしょう。」
「『ストップ・ザ・クラッシュ』は、タイ市場への救命技術の導入を加速させる大きな効果を持ち、命を救うことに役立ちます。われわれはその目的を達成するため、グローバルNCAP(新車アセスメントプログラム)および『ストップ・ザ・クラッシュ』パートナーシップとの緊密な協力関係を継続していけることを楽しみにしております。」

◇タイ交通安全システム改革特別委員会委員長兼「交通安全立法議員のグローバルネットワーク」リーダーシップ会議メンバーのニコン・チャムノン下院議員
「国連世界交通安全週間の期間中、タイにおいて『ストップ・ザ・クラッシュ』が実施されることは素晴らしいことです。わが国の交通死亡事故の増加を食い止めるうえで、安全技術は喫緊に必要とされています。」
「今週発表された第4回交通安全宣言(RoadSafety Manifesto)は、世界各国の国会議員が自国で制定する交通安全法規のひな型を定めています。わたくしは、わが国にとって大いに必要とされ、命を救うことに役立つ二つの技術、ESCとオートバイ用ABSに関する法律をタイ政府が『ストップ・ザ・クラッシュ』後に制定することを願っております。」

◇ASEAN NCAP事務局長のカイリル・アンワル・アブ・カシム博士
「ASEAN NCAPは、自動車の安全性レベルを評価するための衝突試験を実施しております。われわれが与える格付けは、自動車が衝突発生時に乗員をどれだけ保護することができるかを示しています。われわれは今年初め、各自動車にどれだけ事故の発生を予防する能力があるかを評価することによって、基準を引き上げてきました。『ストップ・ザ・クラッシュ』は、自動車の救命技術を促進する取り組みです。世界中の研究が示しているとおり、ESCは、制御不能となった自動車の衝突がもたらす死亡事故の少なくとも40%を防止し、危機的状況に陥った際の操縦制御の大幅な改善によって衝突リスクを低減させることができます。われわれは、こうした情報を広く知らせることによって、顧客が新車購入時に安全技術について絶えず話し合うようになることを願っております。」

タタモーターズ、BGACと自動車組立契約を締結

インドの自動車会社タタモーターズの子会社タタモーターズ・タイランド社は、5億バーツを出資して、バンコクに新たな自動車組立工場を建設する予定です。
 この計画は、Thonburi Automotive Assembly Plant Coとの10年契約が5月末に失効した後に発表されました。
 サンジェイ・ミシュラ最高経営責任者(CEO)によると、タタの自動車(主にピックアップトラック)は、バンコクにあるBangchan General Assembly Co(BGAC)において組み立てられることになります。BGACは、中国のピックアップトラック「フォトン」の組み立てを行っているPhra Nakorn Automobile Co(年間生産能力1万台)の子会社です。
 ミシュラCEOによると、タタはBGACと5年間の組立契約(5年ごとに契約更新可)を確定しました。BGACの工場では、タタ自動車の製造が10月から開始される予定です。
 BGACの工場は一交代制で、1年間にピックアップトラック「ゼノン」を8,000台、小型トラック「スーパーミント」を2,500台組み立てる能力を有しています。

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 「5月から9月までは、両モデル用に2本の組立ラインを導入する」とミシュラCEOは述べています。
 タタは約1,200台の「ゼノン」を在庫に抱えており、新工場で生産が再開されるまでは、今ある在庫から顧客に販売されます。
 「タイの自動車市場が競争的であるという私どもの確信は今も変わっておりません。だからこそ過去10年間、当地における自動車事業に40億バーツを投資してきたわけです」とミシュラCEOは語っています。
 2008年に設立されたタタ・タイランド社は、自動車の国内販売が過去3年間の減少を経て、昨会計年度は力強さを取り戻したと発表しました。2016会計年度(2016年4月−2017年3月)の販売台数は、前会計年度比19%増の1,344台でした。同じく2016会計年度の「ゼノン」のマレーシアへの輸出台数は、前会計年度比17.4%増の297台でした。
 タイの自動車市場は改善していることから、タタ・タイランド社は、現会計年度に2,700台を販売できると期待しています。同社はまた、今年のマレーシア向けピックアップトラックの目標販売台数を300台に設定しています。

4月の国内自動車販売は好調、穀物価格の上昇が一因

タイの4月の国内自動車販売は好調でした。長い休日があったにもかかわらず、新型モデルの発売やバンコク国際モーターショー、穀物価格の上昇が、その理由と考えられます。
 タイ工業連盟(FTI)が5月17日に公表したデータによると、4月の国内自動車販売台数は、3月の8万4,801台からは減ったものの、前年同月比15.1%増の6万3,267台でした。
 FTIの自動車工業倶楽部で広報を担当するスラポン氏は、「農産物価格の上昇と購買力の上昇が相まって、国内市場の空気は一段と活気を帯びつつあります」と述べ、さらにまた、「自動車メーカー各社が1−4月期に新型・新発想モデルを揃って売り出した」ことも指摘しています。
 特に4月の乗用車販売台数は、前年同月比23.2%増の2万5,493台と顕著な伸びを示しています。4月のSUV販売台数は、前年同月比3.9%増の3,665台に止まっていますが、ピックアップトラック販売台数は、前年同月比13.6%増の2万6,146台でした。また1−4月期のタイの国内自動車販売台数は、前年同期比15.7%増の27万3,757台でした。

 1−4月期の販売好調の勢いに乗って、今年の国内自動車販売台数はFTIの予想する80万台(前年比4.1%増)を達成する可能性が高いとスラポン氏は述べています。
 またFTIのデータによると、4月のオートバイ販売台数は、3月より25%減ったものの、前年同月比16.6%増の12万3,084台でした。また1−4月期のオートバイ販売台数は、前年同期比4.5%増の58万4,867台でした。
 それにもかかわらず、FTIの発表によると、タイの4月の自動車生産台数は64カ月ぶりの低水準となる前年同月比12.9%減の12万473台でした。
 1−4月期の自動車生産台数は、前年同期比6.1%減の60万6,028台でした。
 4月の自動車輸出台数は48カ月ぶりの低水準となる前年同月比14.4%減の6万8,927台でした。また4月の自動車輸出額は、前年同月比11.4%減の382億バーツでした。
 1−4月期の自動車の輸出台数は前年同期比9%減の35万3,228台、輸出額は前年同期比10%減の1,859億バーツでした。
 スラポン氏によると、自動車輸出の減少は、自動車生産に悪影響を与えているようです。

タイでの電気自動車生産は儚い希望


その実用化が頻りに喧伝されている電気自動車(EV)の生産は、タイではいまだ実現しそうにありません。その理由として、EV技術はあるものの、タイ国内における長距離運転への関心が薄いことを複数の業界アナリストが挙げています。
 タイ電気自動車協会(EVAT)のヨサポン・ラオヌアル会長は、タイの道路は距離が短く、充電ステーションも数えるほどしかないことから、100%電気燃料の電池式電気自動車(BEV)がタイの道路を走行するのはおそらく難しいと述べています。
 アジア最大の国際産業機械・下請業者見本市で、今年で34回目となる「インターマーチ2017」の主催者UBMアジア・タイランド社が開催したセミナーで、ヨサポン会長は、「現行のBEVモデルは、西洋諸国では、充電1回につき200キロメートルも走行できますが、タイにおきましては、エアコンを使用しなければならないため、充電1回につき120キロメートルしか走行できません」と語っています。

来年BITECで開催れるインターマーチ2018
https://www.jetro.go.jp/j-messe/tradefair/INTERMACH2018_55999(外部リンク:ジェトロ)

 ヨサポン会長によると、電気と石油で動くプラグイン・ハイブリッド電気自動車(PHEV)は、その電気系統の能力から、20キロメートル走るのが精いっぱいだといいます。
 「タイのような暑い国では、充電ステーションがもっと増えないかぎり、BEVの普及は難しいかもしれません」と語るヨサポン会長は、「今後5年以内に技術が改善されること」への希望を表明しています。
 ヨサポン会長によると、今年税制優遇措置を受けた企業や代理店約120社は、来年(2018年)には、バンコク首都圏を中心に各々充電ステーションの建設に着工すると見られます。
 タイ投資委員会は今年3月、EVへの優遇措置(5〜8年間の課税免除を含む)を承認しました。対象となる事業は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン電気自動車(PHEV)、電池式電気自動車(BEV)の生産です。また対象となる車種は、乗用車、ピックアップトラック、バスなどで、生産技術に応じて優遇措置の内容はそれぞれ異なります。HEVは輸入する機械の関税が免除されますが、PHEVへの投資には3年間の法人所得税免除と機械の輸入関税が免除されます。
 主要EV部品を1つ以上製造するPHEVへの投資家は、1部品につき法人所得税の免除措置がさらに1年間延長されます(ただし、組み合わされた税制免除措置が6年間を超えない範囲で)。
 BEVへの投資は、5〜8年間の法人税免除が受けられます。主要EV部品を1つ以上生産したBEVへの投資家は、1部品につき税制免除措置がさらに1年間延長されます(ただし、組み合わされた免除措置が10年間を超えない範囲で)。
 タイ自動車工業会のタナワット・クムシン会長は、主要自動車メーカーに各社EVの現地生産を奨励するためには、タイのEV市場を発展させる必要があると主張しています。

フォードの人員削減、タイへの影響の可能性は低い見通し

米自動車会社フォードモーターのタイ生産子会社フォード・タイランド社は、自主早期退職やその他の特別手当を通じて北米とアジアの従業員1,400人を削減するという本社の計画によって影響を受ける可能性は低い。
 アメリカ第2位の自動車メーカーは、この措置によって、下落する株価の反転を期待しています。
 業界消息筋によると、同社が昨年人事凍結に着手したのは、デトロイトの幹部から組織の贅肉を落とす必要があるとすでに伝えられていたことから、企業としては、影響はないもようです。現地子会社の経営陣も、かなり以前からこのことを知っていたようです。
 しかし製造面では、同社のラヨーン工場はやや太り気味なことから、おそらく影響があるだろうと言われています。
 今のところ売れ行き好調なピックアップトラック「レンジャー」とSUV「エベレスト」の輸出と国内需要をフォードが維持できれば、影響を受ける可能性はないと見られています。
 「乗用車は経年劣化する製品であるため、今や生産量は限られております。新車の買い替えもどうなるか先が読めない状況にあります。ピックアップやSUVの増産によって、この状況に対処できれば、たとえ影響はあっても、最小限に止まるものと期待しています」と消息筋は語っています。
 フォードASEANの声明によると、削減の詳細はフォードの従業員に来月伝えられるとのことです。声明文には、「現時点で、コスト削減構想には、自主早期退職などの措置の採用によって、北米とアジア・太平洋地域におけるフォードの給与コストと人員を本年10%削減する計画が含まれている」とされています。
 ミシガン州を本拠地とするフォードは、ASEAN地域の主力生産拠点をタイに置き、ラヨーン州で2つの工場を経営しています(両工場の生産能力は合計で年間31万5,000台)。フォードは、ベトナムにも組立工場があり、そこでは年間2万台を生産しています。
 フォード・タイランド社は世界180市場に向けて、ピックアップトラック「レンジャー」、SUV「エベレスト」、「エコスポーツ」、ハッチバック「フィエスタ」、「フォーカス」を生産しています。

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 フォードがタイに登録しているのは、フォードモーター・カンパニー(タイランド)、フォード・オペレーション(タイランド)、フォード・サービス(タイランド)、フォード・セールス&サービス(タイランド)の4社です(これら4社の従業員数は不明)。
 2016年のフォード全体の自動車販売台数は前年比12.4%増の4万972台でした(同社発表)。稼ぎ頭の「レンジャー」が前年比29%増の3万756台、「エベレスト」は42%増の7,111台でした。同じく2016年に同社がタイで販売した乗用車の台数は、「フォーカス」が前年比44%減の525台、「フィエスタ」が前年比86.6%減の409台でした。
 ロイター電によると、フォードモーターは5月17日、下落する株価の反転を図るため、自主早期退職やその他の特別手当を通じて北米とアジアの従業員1,400人を削減するという計画を発表しました。同社は、管理職を含む非生産部門の従業員1万5,000人のうち10%に当たる人員の削減で、当該部門の人件費を10%削減できると言っております。
 フォードモーターは、従業員の大部分を占める給与労働者(フォードクレジット社で働く製品開発担当者や従業員を含む)が今回の人員削減計画によって影響を受ける可能性を否定しています。人員削減案のおよそ三分の二が北米で実施され、残りの約三分の一がアジアで予定されています。
 フォードモーターは、9月末までに従業員の自主的な離職を奨励するため、早期退職割増金を含む特別手当を提供する予定です。

自動車部品メーカー、電気自動車時代への対応が課題

タイの自動車部品メーカーは、電気自動車(EV)の新時代を生き抜くために、他分野の製品への展開を進めていく必要があります。従来の自動車部品では、最新のEVスペックとして使い物にならないというのがタイ下請振興協会(サブコン協会)の見方です。
 国内自動車部品メーカーが加盟している同協会のチャナチップ会長は、他分野のいくつかの製品は、自動車部品産業で使われているのと同じ原材料から製造することができると述べています。潜在力のある分野の一つが医療機器です。なぜなら、タイ政府がASEANにおけるタイの医療ハブ化を推し進める明確な方針を打ち出しているからです。
 「私ども(タイ・サブコン協会)は、医療分野の需要を満たせる品目の生産に徐々にシフトしていくよう会員企業に伝えております。とりわけ、車いすや病院用ベッドなどは、自動車部品産業で使用されているのと同一品質の原材料からつくることが可能です」とチャナチップ会長は語っています。
 タイ・サブコン協会は、会員企業約500社、投資規模1,000億バーツ超の業界団体です。チャナチップ会長によると、同協会は、電気自動車の開発を後押しする政府の政策が自動車部品産業に大打撃を与える可能性を憂慮しているといいます。電気自動車に使用される部品は従来型の自動車に使用されているものとは異なるからです。国内自動車部品企業は、同じ原材料を使用する他分野の製品の製造にシフトするほうがはるかに安上がりでしょう。電気自動車の部品を製造するとなると、機械設備を新たに導入する必要があるからです。

 すでにタイのエネルギー会社のなかには、省エネ製品・サービスへの高まる需要を取り込もうと自社の事業を転換しているところもあります。
 国営の石油・ガス会社であるタイ石油公社(PTT)は、リチウムイオン電池の国内生産に向けた実現可能性の検討に入っています。PTT傘下のグローバル・パワー・シナジーは、アメリカの新興リチウムイオン電池会社24Mとライセンス・サービス契約を締結しました。
 タイ政府は、新経済時代に向けた10の産業(次世代自動車、スマート電子機器、富裕層向け医療・健康ツーリズム、農業・バイオテクノロジー、食品、産業用ロボット、物流・航空、バイオ燃料・バイオ化学、デジタル機器、医療サービス)を推進しています。
 チャナチップ会長によると、タイ・サブコン協会は、公立病院との間で医療機器の研究開発に向けた協力のあり方を探るための協議を開始する計画のようです。
 チャナチップ会長はまた、「タイ・サブコン協会は、会員企業が製造する車いすや病院用ベッドへの受注を獲得すべく公立病院に掛け合うつもりです」とも述べています。
 タイ工業連盟は先ごろ、医療・健康産業の基準と質を検査するための医療機器センターの設立を政府に要望しました。そうしたセンターがあれば、小規模企業の製品開発と市場開拓に役立つでしょう。
 タイは年平均で総額900億バーツの医療装置を輸出し、500億バーツの医療機器を輸入しています。