日産自動車と三菱自動車は、きわめて重要度の高い東南アジアの自動車産業において国内のライバル企業と戦うため、両社の過去7カ月間のアライアンス(提携)を強化する計画を進めています。
両社の会長を兼ね、フランス・ルノー社の取締役会長兼CEOでもあるカルロス・ゴーン氏は、日産と三菱自が、すでに発表したよりも大幅なコスト削減を目指していることから、サプライヤー、サービス、技術の共有を促進する意向を明らかにしています。
燃費データ改竄スキャンダルでライバルの三菱自が打撃を受けたのち、2016年に同社株式の34%を日産が取得しました。これで強化された日産・三菱アライアンスにとって、東南アジアは試金石の場となるでしょう。同アライアンスが主張するように、東南アジアにおける両社の業務は重なる部分が多く、その提携の強化は、トヨタなど競合他社から市場シェアを奪い取るのに役立つでしょう。
米国の自動車市場がピークを過ぎ、日産グループがその伝統的牙城・中国で他の日本車メーカーとの競争にしのぎを削っているまさにそのとき、日産は東南アジアにおいて攻勢をかけています。
2017年はアライアンス全3社(日産・三菱自・ルノー)にとって「非常に力強い」年になりつつありますが、東南アジアにおいて、日産と三菱自はその潜在力を「かなり下回って」いる市場シェアを拡大するため、互いに協力していく必要があるとゴーン氏は述べています。
モルガン・スタンレーMUFG証券のデータによると、2016年のASEAN地域における日産の市場シェアは5%でした。三菱自の市場シェアはそれを上回る7%でしたが、同社の競争力と製品ラインナップは、研究開発費の削減後に縮小しています。
ゴーン氏は、「両社が協力すれば、製品提供やローカリゼーション、その他多くの点で強化が図られるでしょう。それによって両社は、東南アジアにおいて今よりもはるかに優れ、はるかに競争力のある企業になるでしょう」と語っています。
ゴーン氏はまた、仕入れや物流を共有すれば、技術や生産プラットフォームの共同管理も進むとも述べています。
先のタイとインドネシアの訪問の締め括りに演説したゴーン氏は、「これらは、2018年、2019年、2020年に実現することになる」と語っています。

日産と三菱自の会長を兼務するゴーン氏は、両社のアライアンスは設備利用を高め、「はるかに合理的な方法で」そのプラントを活用できるようになると述べています。
日産は先ごろ、三菱自の幹部(小糸栄偉知氏)をインドネシアの事業責任者に就けました。日産・三菱アライアンスに専念するため4月に日産のCEOを退いたゴーン氏は、「われわれは同じパートナーを持ち、同じ技術を使うことになる」と述べ、「それ(=アライアンス)は、われわれが二度手間をかけずに済む唯一の方法です」と語っています。
日産と三菱自は、両社のアライアンスによって、2017−18会計年度に計490億円(4億3,800万USドル)、2018−19会計年度には計1,000億円のグローバルコストが削減できると見積もっています。

ゴーン氏は、政府が産業支援を表明してくれればすぐに、日産・三菱アライアンスは、東南アジアで電気自動車を推進する用意ができていると述べています。「東南アジアの自動車市場に電気ショックを与える“願望”ならぬ“意志”があるという最初の合図があれば、われわれはそこに立っているでしょう」とゴーン氏は語っています。
モルガン・スタンレーMUFG証券のアナリスト磯崎仁(ひとし)氏は、東南アジアにおける三菱の強力なプレゼンスに加え、東南アジアと関係の深い商社など、巨大な三菱グループが持つ販売・流通網を活用することで、日産はアライアンスのうまみを享受することができると主張しています。
磯崎氏は、2016年のグローバル自動車市場における日産のシェアが6%であったと述べ、「日産がASEAN市場を奪取しないかぎり、そのグローバルシェア目標の8%達成は難しい」と語っています。