タイの自動車部品メーカーは、電気自動車(EV)の新時代を生き抜くために、他分野の製品への展開を進めていく必要があります。従来の自動車部品では、最新のEVスペックとして使い物にならないというのがタイ下請振興協会(サブコン協会)の見方です。
国内自動車部品メーカーが加盟している同協会のチャナチップ会長は、他分野のいくつかの製品は、自動車部品産業で使われているのと同じ原材料から製造することができると述べています。潜在力のある分野の一つが医療機器です。なぜなら、タイ政府がASEANにおけるタイの医療ハブ化を推し進める明確な方針を打ち出しているからです。
「私ども(タイ・サブコン協会)は、医療分野の需要を満たせる品目の生産に徐々にシフトしていくよう会員企業に伝えております。とりわけ、車いすや病院用ベッドなどは、自動車部品産業で使用されているのと同一品質の原材料からつくることが可能です」とチャナチップ会長は語っています。
タイ・サブコン協会は、会員企業約500社、投資規模1,000億バーツ超の業界団体です。チャナチップ会長によると、同協会は、電気自動車の開発を後押しする政府の政策が自動車部品産業に大打撃を与える可能性を憂慮しているといいます。電気自動車に使用される部品は従来型の自動車に使用されているものとは異なるからです。国内自動車部品企業は、同じ原材料を使用する他分野の製品の製造にシフトするほうがはるかに安上がりでしょう。電気自動車の部品を製造するとなると、機械設備を新たに導入する必要があるからです。

すでにタイのエネルギー会社のなかには、省エネ製品・サービスへの高まる需要を取り込もうと自社の事業を転換しているところもあります。
国営の石油・ガス会社であるタイ石油公社(PTT)は、リチウムイオン電池の国内生産に向けた実現可能性の検討に入っています。PTT傘下のグローバル・パワー・シナジーは、アメリカの新興リチウムイオン電池会社24Mとライセンス・サービス契約を締結しました。
タイ政府は、新経済時代に向けた10の産業(次世代自動車、スマート電子機器、富裕層向け医療・健康ツーリズム、農業・バイオテクノロジー、食品、産業用ロボット、物流・航空、バイオ燃料・バイオ化学、デジタル機器、医療サービス)を推進しています。
チャナチップ会長によると、タイ・サブコン協会は、公立病院との間で医療機器の研究開発に向けた協力のあり方を探るための協議を開始する計画のようです。
チャナチップ会長はまた、「タイ・サブコン協会は、会員企業が製造する車いすや病院用ベッドへの受注を獲得すべく公立病院に掛け合うつもりです」とも述べています。
タイ工業連盟は先ごろ、医療・健康産業の基準と質を検査するための医療機器センターの設立を政府に要望しました。そうしたセンターがあれば、小規模企業の製品開発と市場開拓に役立つでしょう。
タイは年平均で総額900億バーツの医療装置を輸出し、500億バーツの医療機器を輸入しています。